ついにオンライン診療料が正式に算定可能になるとのニュースがありました。
詳しい要件は下記の通りです。

【新】 オンライン診療料
【主な算定要件】
(1)別に定めるオンライン診療料が算定可能な初診以外の患者で、かつ、当該管理にかかる初診から6カ月以上を経過した患者(初診から6カ月の間は毎月同一の医師により対面診療を行っている場合に限る)に対して、オンラインによる診察を行った場合に算定できる。ただし、連続する3カ月は算定できない
(2) 患者の同意を得た上で、対面診療(対面診療の間隔は3カ月以内に限る)とオンライン診療を組み合わせた療養計画を作成し、当該計画に基づき診察を行った上で、その内容を診療録に添付している
(3) 当該診療料を算定する場合は、当該保険医療機関に設置された情報通信機器を用いて診察を行う
(4) オンラインを用いて診察する医師は、対面診療を行っている医師と同一の医師である
※オンライン診療料を算定する場合の処方箋料の取扱い等については、有効性や安全性等に配慮し別に定める

【オンライン診療料が算定可能な患者】
特定疾患療養管理料、小児科療養指導料、てんかん指導料、難病外来指導管理料、糖尿病透析予防指導管理料、地域包括診療料、認知症地域包括診療料、生活習慣病管理料、在宅時医学総合管理料または精神科在宅患者支援管理料を算定している初診以外の患者で、かつ、当該管理にかかる初診から6カ月以上を経過した患者

【主な施設基準】
(1) 厚生労働省の定める情報通信機器を用いた診療にかかる指針などに沿って診療を行う体制を有する医療機関である
(2) 緊急時に概ね30 分以内に当該医療機関において診察可能な体制を有している(ただし、小児科療養指導料、てんかん指導料または難病外来指導管理料の対象患者は除く)
(3) 当該医療機関において、1カ月当たりの再診料等(電話等による再診は除く)およびオンライン診療料の算定回数に占めるオンライン診療料の割合が1割以下である

当院的にキツイ要件

実はオンライン診療には大変に期待をしていて、必要があればオンライン診療に力を入れていくことも検討はしていたのですが、この中で、

  • 3か月以内ごとに必ず対面の診察をしないといけない
  • 高血圧や糖尿病、慢性胃炎など、特定疾患管理料が算定できる患者さんでないといけない
  • オンライン診療は全外来の1割以下でないといけない
  • 対面と同じ医師がオンライン診療もしなければならない

の4点がかなり当院としては厳しいなと感じています。
 
当院では、状態が落ち着いている患者さんは45日~2か月ごとに来ていただいていることも多いのですが、たとえば「高血圧しかなく、かなり状態が落ち着いているような患者さん」などについては、1回おきに顔だけ見て、変わりない旨を確認するだけにして待ち時間を軽減する策をとっています。
必要に応じて、その際に採血をしたりもします。
この場合、3か月ごとに診察、間に1回(採血もできない)オンライン診療よりも患者さんのメリットが大きいのでは、と感じてしまいます。
 
特定疾患管理料が算定できない患者さんでは算定ができないのも非常に不便です。
 
さらに、当院のようにITに抵抗のない患者さんが多いクリニックでは、利用者数が1割を超えてしまう事態も想定しなくてはなりませんから、数のコントロールもしなくてはいけません。
 
対面時と同じ医師でなければならないとなると、非常勤の先生にお願いすることもできません。
 
総じてみると、在宅の患者さん対象のオンライン診療であれば、数のコントロールもでき、色々な方の負担が減らせて大変良いと思いますが、当院には向かないように思います。

「予約代」の是非

オンライン診療をされているクリニックさんは、診察代とは別に「予約代」と称して別途自費で2500円程度の料金を徴収しているところが多いようです。
システム費用などを回収するためには致し方なしという気もしますが、患者さんの負担が大きすぎるような気がして、やはり当院では採用しづらい方式だなと感じます。
さらに、予約代をいただくためには、「選定療養」として、下記条件をクリアする必要があります。

【予約診察】

  1. 予約時間から30分以上患者を待たせないこと
  2. 予約外の患者を2時間以上待たせないこと
  3. 予約料を徴収しない時間を外来診療時間の2割程度確保すること
  4. 10分以上の診療時間を確保すること
  5. 医師1人につき1日概ね40人を限度とすること
  6. 予約料の額は社会的に見て妥当適切なものでなければならないこと

(参考)保医発0326第2号 平成22年3月26日

これ、ちゃんとアナウンスしている業者がどれだけいるかかなり疑問です……。
〇ド〇ーさん他の営業の方からこの話、聞いたことがありません。
そういうところがこの業界の「グレーだな」と思うところですね。

それでも導入するなら

それでも当院で導入するとすれば、

  • 電子カルテ用のツールを開発して、処方箋の発送用のラベルをボタン一発で出せるようにする(うちなら3時間くらいで作れると思います。なくても何とかなるでしょう)
  • 電子カルテ端末の横にLineやSkypeなどのクライアントをインストールしたネット端末を用意する

これだけで問題ありません。

オンライン診療専用システムのわずかなメリット

オンライン診療専用のシステムを使うメリットはカード決済ができることくらいですが、どうせ3か月以内に来院されるわけですから、未収にしておいて次回いただけばいいだけの話。
もし万が一来られなくても、7割は保険から頂けるのでリスクは最小限です。
 
予約管理についても、普段使っている予約システムに予約を登録しておいて、時間になったらご連絡すればいい。
管理しなければいけない予約システムが複数になると、医療事務の負担はかなりのものになります。

オンライン診療専用システムを使うリスク・コスト

実はこのところ、多くのオンライン診療システムの業者さんから案内をいただいているんですが、上に述べた通り、わざわざ専用のシステムなど使わなくてもいいんですよね。
むしろ、

  • その会社がつぶれたら方式を変えなければいけない、データを失う恐れがある
  • 新しいことをスタッフに覚えてもらうコスト、リスク
  • そのシステムのセキュリティ問題が起きるリスク

などがきつい。
 
そもそも患者さんに専用のアプリをインストールさせること自体、あまり好ましいとは思えません。
皆さんが使っていらっしゃるLineなりSkypeなりHangoutなりをこちらで用意すべきと考えます。
そういうわけで、オンライン診療システムの業者さんの営業は、全てお断りさせていただいています。